実施報告

2021.08.23
アートラボぎふ

現代アートの楽しみ方 ーぎふ美術展の自由表現部門とAAICー 第1回 実施報告

画像1

昨年度までに、岐阜市と高山市で開催して好評だった「現代アート」とは何か?を学ぶ5回シリーズの講座を受け、今年は「現代アートの楽しみ方」と題して、「第3回ぎふ美術展」会期中に岐阜県美術館で開催しました。自由表現部門の入賞作品の画像やArt Award IN THE CUBE(AAIC)入賞作品の映像を観ながら「現代アート」を楽しみました!


【開催概要】 チラシはこちら(PDF)

◆日時  令和3年8月9日(月・振休) 13:30~15:00

◆会場  岐阜県美術館(岐阜市宇佐4-1-22)

◆講師  桑原 鑛司氏(Art Award IN THE CUBE企画委員会委員長)

◆参加者数  53名


◆内容  令和3年度最初のプログラムは、「第3回ぎふ美術展」会期中の8月9日に同展会場の岐阜県美術館において開催する運びとなりました。今年度も昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、受付での手指消毒、検温、チェックシートの記入、マスク着用、ソーシャルディスタンスの確保など、感染防止対策を講じて開催しました。講師の桑原先生にもマスクを着用してご講義いただきました。

_DSC0086.JPG  _DSC0061.JPG   

まず最初に、1946年から69回続いた「岐阜県美術展」を改革し「清流の国ぎふ芸術祭 ぎふ美術展」を立ち上げる際に、Art Award IN THE CUBE(AAIC)と関連することを期待して『自由表現部門』を設けた話が紹介されました。AAICも「ぎふ美術展」の自由表現部門も「現代アート」の展覧会と名乗ったことは一度もないとのことで、最近よく使われる「現代アート」とはどんな意味があるのか、講師自身、「現代アート」という言葉に抵抗を覚え長年にわたり考え続けてきたことを話されました。

講師が学生だった1960年代はジャクソン・ポロックやモーリス・ルイス等々ニューヨークの抽象表現主義の画家たちが大活躍していた頃であり、「現代美術(=モダンアート)」と言われた最先端美術(=コンテンポラリーアート)が登場した。彼らは様々な技法を駆使して、絵画に何ができるのかということに絶えず挑戦し、絵画とそうでないものの垣根となるギリギリの領域に果敢にチャレンジしていた。そうした芸術に出会い、講師は心が揺さぶられる感動を覚えた。

一方でほぼ同時代にマルセル・デュシャンが登場し、男性用便器を作品としたり有名な『モナ・リザ』に髭を描いて自分の作品として展覧会に出品したりして、これまで奉られてきた芸術への破壊行為や既成の価値観に対してチャレンジした。彼の行為は美術学校の学生として一生懸命勉強して絵を描いてきた講師にとって、そうしたものを全否定された気になり腹を立てた。最初は、デュシャンを否定する人が多かったが、時代の変化とともに認められるようになり、今やパフォーマンス、インスタレーション、ビデオアート、ダンス、写真、AIまで美術の世界で用いられるようになった。こうした作品を世間では芸術、アートと呼ぶようになり、ここ10年で「現代アート」という言葉がマスコミを賑わすようになった。それではこの「現代アート」とは何を表現する言葉なのか、それ以来そうした思いが講師の頭から離れなくなった。

そうした中、京都大学総長を務めゴリラ研究の第一人者であり人類学者である山極壽一氏にお会いし、著書『都市と野生の思考』の中にある「人は歩くことで何かを表現している。人は歩くだけでも何かを表現する生き物なんだ。これがアートの起源ではないか」という一節に触れ、眼からうろこの思いであったとのこと。山極先生が使った「アート」という言葉は、これまで講師が触れてきたものよりはるかに範囲が広く、奥が深く、「アート」という言葉の捉え方が全然違うと感じた。講師がこれまで考えてきた「現代アート」の「アート」の部分を山極先生の考える「アート」に置き換えると、「現代アート」は何でもありとなる。誰でも作家になれるし、その作家が自分の世界観や解釈を作品を通して表現すればいいんだという考えに至った時、ものすごく気持ちが楽になったとのこと。

「アート」とは本来伝えたい内容が先にあり、それを何らかの手法で表現することであったはず。とすれば、「現代アート」はまさにこのことを具現化していると言えるのではないか。そして重要なことは、「アート」においては多様な解釈が許されるということ。同じ一つの作品に対していろいろな解釈が成り立つということは、見る側にとっての喜びであり快感でもある。推理小説を読んで犯人を当てるようなもので、その作品の解釈が正しいかどうか分からないが、自分はこう考えて犯人に辿り着いた、それでもいいのだとなれば楽しみ方はそれ自体自由になるとのお話がありました。

休憩をはさんで、「第3回ぎふ美術展」自由表現部門のぎふ美術展賞・優秀賞の3点とAAIC2020の入賞9作品の映像を観ながら講師の解説を聞いて、参加者は思い思いの解釈で「現代アート」を楽しんでいました。

_DSC0111.JPG   _DSC0131.JPG

◆参加者の声  「何かを表現したい、伝えたいという本来の在り方・原点というものを感じさせられた」「アートへの考え方に認識を新たにしました。目からうろこの思いです」「作品の持つ世界観や必然性、意味の大切さなどいろいろ考えさせられました」など参加者の芸術観に一石を投じる講座となりました。

ページトップへ