実施報告

2022.11.25
アートラボぎふ

パフォーマンス/ROOT:根 ワークショップin相生座 実施報告

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NHK Eテレ「にほんごであそぼ」のセット衣装を担当するなど、コスチュームアーティストとして広告、演劇、ダンス、バレエ、映画、テレビなどその発表の場は多岐にわたる ひびのこづえさんを講師に迎え、「ちいさな生きものブローチ作り」ワークショップとアオイヤマダさんによるパフォーマンス公演「ROOT:根」を開催しました!


【開催概要】

◆日時  【ワークショップ】令和4年10月22日(土) 13:00~15:30

     【パフォーマンス】令和4年10月23日(日) 14:00~15:30

                    公開リハーサル:11:00~12:00

     【衣装展】    令和4年10月22日(土) 10:00~16:00

              令和4年10月23日(日) 10:00~13:00

     【相生座見学】  令和4年10月22日(土) 10:00~16:45

              令和4年10月23日(日) 10:00~16:30

◆会場  美濃歌舞伎博物館 相生座(瑞浪市)

◆講師  ひびのこづえ氏(コスチュームアーティスト)

◆参加者数  講座:44名  公演:154名


◆内容  

【ワークショップ「ちいさな生きものブローチ作り」】

講師が舞台やテレビの仕事で衣装を作ったときに残ったきれいな生地や衣装の断片を使って、きれいな色の糸でチクチク縫いながら、ちいさな生きものブローチを作ります。講師が衣装を制作するときには必ず自然の中のモノをヒントにするという。人間の創造力だけでは限界があり、自然の中のモノはそれを補ってくれるとのこと。普段見慣れている自然を感じてほしい、象のように大きな動物でもブローチにすれば「ちいさな生きもの」になる、人間だって広い世界から見たら「ちいさな生きもの」であるとの講師の想いで始まった講座。会場は、瑞浪市の中心市街地から車で20分程の山間部にひっそりと佇む地歌舞伎を上演する「相生座」で開催しました。当日は「清流の国ぎふ」マスコットキャラクターのミナモも歌舞伎衣装を纏って応援に駆けつけてくれました。

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冒頭、講師から制作手順の説明がありました。舞台やテレビの仕事で衣装を作ったときに残った生地や衣装の断片を一つひとつ棒状に巻いて片方を輪ゴムで留めて大切に保管しておき1片の生地も無駄にしないこと、危険防止のため針は1本だけ使うこと、そして紛失しないよう針の管理は自分自身でしっかり行うこと、作業机の上はきれいに整理整頓しないと良い作品が作れないことなどの話があり、講師の衣装づくりの取り組み姿勢・思想を垣間見ることができました。

 

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まず最初は作りたい生きもののデッサンです。皆さん好きな生き物を描き始めます。その後、色鉛筆で色を塗りますが、布を選ぶ段階であれこれ迷わないように、あらかじめ色を決めて、その色の生地を使うようにとのアドバイスがありました。

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デッサンを描き終えたら、次は生地選びです。講師に準備いただいた沢山のカラフルな生地の中から、デッサンした色の生地を選んで必要な分だけハサミで切り取ります。そして、刺繡用の太めの糸を付けた針の中から好みの色の糸が付いた針を1本だけ使います。ハニカム状の布(台座)の上にデッサンと同じ形の生地を置いてチクチクと縫い付けていきます。初めて針を持つ小さなお子さんも、お母さんに見守られながら上手に縫い進めていました。最後に安全ピンを付けてブローチの完成です。

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ブローチが完成した参加者から順にブローチを胸に付けて前に出て講師から講評を受けました。トカゲ、花、妖精、蝶、ウサギ、ユニコーン、カメレオン、カメとウサギ、キノコ、犬、小さな魚などなど、個性あふれる作品に講師からは「違う素材と色の生地を使い立体感もあってステキ」「白い花びらを一つひとつ切ってその上からピカピカ光る青い布を重ねることで立体的にできていて素晴らしい」「顔の表情をしっかり作っているのでものすごくチャーミング」「蝶だけど絵のようにも見えてコンセプチュアルで色の使い方がおもしろい」などお褒めの言葉をいただきました。

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【パフォーマンス「ROOT:根」】

翌23日(日)には、相生座の観客席中央に地歌舞伎で使う所作板の上に900mm×1,800mmのミラー板18枚を設置して舞台を作り、講師が制作した衣装を纏って1枚ずつ服を脱ぎ、脱皮を繰り返しながら踊ることで違う生き物に変異していくパフォーマンスを開催しました。演ずるのは2000年生まれの若いダンサー、アオイヤマダさん。東京2020オリンピック閉会式ではソロパフォーマンスを披露し、東京2020日本フェスティバル「わっさい」ではMC、振付を務めるなど、幅広い分野で活動の場を広げる今注目の若手ダンサーです。

暗くなった会場の一角から小野龍一の神秘的な音楽と共に大きな緑色の衣装を纏ったアオイヤマダさんが登場します。観客の合間を縫って舞台に登場した森に住む巨大なカエル。そのカエルから産み落とされた赤い身体から、耳が5つの頭、黒いイボイボの半身、ピンクの丸でできた体毛、放射状に広がる腰、5つの尾をもつお尻、ガラガラの肌を持つ生き物へと生まれ変わっていきます。そして最後は人間となり、その後には身体から根が生え、森の土に還りました。カエルから得体のしれない生き物、人間、そして根が生え土に還るという様を柔軟な身体の動きと繊細な指先の動きで見事に表現したパフォーマンスは観客を「ROOT」の世界へと誘い虜にしていました。

IMG_4028.jpg 00森に住む巨大なカエル正面01.jpg  

01森に住む巨大なカエルアオイちゃん笑顔01.jpg 02脱皮02.jpg

03カエルから産み落とされた赤い身体01.jpg 04赤い服を脱ぐ01.jpg

05耳が五つの頭02.jpg 05耳が五つの頭03.jpg 

07ピンクの丸でできた体毛03.jpg 07ピンクの丸でできた体毛四つん這い05.jpg 

08放射状に広がる腰01.jpg 09五つの尾をもつ尻02.jpg

10生姜をするダンス03.jpg 11ガラガラの肌が生まれていく02.jpg

12最後は人となり00.jpg 12最後は人となりTVチャンネル操作02.jpg 

14森の土に還る08.jpg 14森の土に還る4015顔の横に両手05.jpg    

講演終了後、引き続いて、ひびのこづえさん、アオイヤマダさん、美濃歌舞伎博物館相生座館長の小栗幸江さん、そして「アートラボぎふ」ダイレクターの古田菜穂子さんによるトークショーを行いました。

ファシリテーターを務める古田さんから地歌舞伎小屋で開催した感想を聞かれたひびのさんからは「これだけ多くの皆さんに遠い所まで来てもらい感激。皆さんのパワーが嬉しかった」、また開催場所を提供いただいた小栗さんからは「今日は良い機会をいただき相生座自体が喜んでいる。観客との間に何らかの物語を紡ぎあげていくのがパフォーマーの仕事。自分の内面をどう表現するかとか、それを人がどう感じるかというよりも、観客の皆さんがアオイさんの良いところを全部引き出した。この相生座にエネルギーを与えていただきありがとうございました」との発言がありました。

また、アオイさんからはROOTがどのようにできたかの裏話が披露されました。ひびのさん制作の衣装を見て、小野龍一さん作曲の音楽を聴いているうちに何故か「しょうがない」という言葉が浮かんだ。大人になると「しょうがない」と言うことが多くなる。「しょうがないなあ」と言うと救う反面すべてを捨て去る言葉であり、すごく残酷で複雑な言葉だと感じた。それで「しょうがない」をテーマにした詩を書いて小野さんに見せたら「しょうがない」の曲が出来て、曲中に流れるボーカルはアオイさんがボイスメモで録音したものとのこと。

次に古田さんから衣装に関して問われたひびのさんからは「いつもは脱いだり着せたりしてパフォーマンスを作っているが、アオイさんは華奢だから全部着せて、どんどん脱がせてみようと思った。一番やりたかったのは最後の『根』の衣装。カンボジアの遺跡で根をはびこらせて建造物を破壊している植物の姿を見て、人間とはこんなにも小さなものだと実感し、地球とか自然の素晴らしさを感じ、その思いを具現化した」との話がありました。

また、古田さんから地歌舞伎における衣装の果たす役割について聞かれた小栗さんからは「パフォーマンスの衣装は立体が中心となっているが、歌舞伎の衣装は平面」との違いに触れ、「歌舞伎の衣装は身体表現を増長させるもので、見た瞬間に役者のキャラクターが分かるように設定されている。今回の衣装も内面から作り上げられたものが形となって現れている」と共通点に言及、「歌舞伎をこうした衣装でやるという冒険をしてみたくなった」とひびのさんの衣装に感化された心の内を吐露。

それを受けて、アオイさんから「また、この相生座で小栗さんと共演してパフォーマンスをしたい。こづえさんの衣装と歌舞伎で傾(かぶ)きたい」との発言があり、小栗さんからは「これから新しいことをやろうとするとこの小屋も生まれ変わらなかればならない部分も見えてきた。それを改善しつつ新しいことをやっていきたい。こづえさん、アオイさん、よろしくお願いします」との抱負が聞かれました。

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また、会場には、ひびのこづえさん制作の衣装12点が展示され、各衣裳に用意されたQRコードをスマホで読み取ると、その衣装を着たアオイヤマダさんが音楽に合わせて楽しく動き出すAR(拡張現実)の技術を駆使した衣装展や、小栗館長のご好意で相生座の舞台裏や舞台の床下にある“奈落”、地歌舞伎の衣装や所蔵品などの見学会も開催しました。

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◆参加者の声  「衣装の切れ端は見ているだけでも楽しかった。それを使ってブローチが作れるなんて贅沢。自分の作品も満足のいくものができたし、他の方の作品もアイデアがすごくて楽しめました」「ひびのさんのお裁縫に対する想い(哲学)が知れてとても嬉しかった」「パフォーマンスは圧巻で感動しました。さらに終了後にパフォーマー、コスチュームアーティストなど皆様のお話を聞けて想いが伝わりました」「相生座での公演は大きなホールと違い、パフォーマンスの空気や質感、息づかいまで体感できて、その世界観に引き込まれました」「パフォーマンスも衣装も素敵で、自分の創作意欲が刺激された」と、子どもから大人まで参加者の皆様に楽しんでいただけ、大変満足度の高い講座となりました。

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