実施報告

2022.12.05
アートラボぎふ

彫刻実技講座 私の大好きなもの 実施報告

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講師による作品制作へのアドバイスを受けながら彫刻を学び、2回目では焼成した作品を鑑賞後、古の美術品に触れる彫刻体験講座を開催しました!


【開催概要】

◆日時  【第1回】令和4年9月3日(土) 13:00~16:30

     【第2回】令和4年11月19日(土) 13:30~16:00

◆会場  セラミックパークMINO(多治見市)

◆講師  神戸峰男氏(彫刻家、日本芸術院会員、名古屋芸術大学名誉教授)

     鈴木紹陶武氏(彫刻家)

◆参加者数  【第1回】17名

       【第2回】15名


◆内容  彫刻家で日本芸術院会員の神戸峰男先生を講師にお迎えし、2回シリーズの彫刻体験講座を開催。会場は美濃焼の産地、多治見市にあるセラミックパークMINOで開催しました。当日は「清流の国ぎふ」マスコットキャラクターのミナモも応援に駆けつけてくれました。

【第1回】

初回は1.5Kgの信楽産の粘土から「私の大好きなもの」を造形します。この美濃地域の土ではうまく作ったつもりでも割れてしまうが、信楽産の粘土はどういう作り方をしてもうまく焼ける。作為がそのまま形となる世界に誇れる土であるとのこと。今回はアシスタント講師として“魔法の手を持つ”彫刻家の鈴木紹陶武先生も参加いただきました。造形した作品は鈴木先生が持ち帰り、自宅の窯で焼いて第2回開催時に持ってきていただきました。

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最初に神戸先生から焼き物についての説明がありました。人間が集団を作って暮らし始めたのが40万年前、モノを作って利用しながら生きていくようになったのが4万年前で焼き物を作ろうという意思がはっきりした頃、そして焼き物を産業として利用して生活に役立てようとして4千年になる。粘土は573℃でα石英がβ石英に変化し粘土の性質がガラッと変わる。今回は1,000℃というさらに高温で焼いて二度と土に還らない状態にする。皆さんが本日作った作品は作為的に壊さない限りほぼ永久的にその形が残るという性質があることを意識していただき、緊張感をもって作っていただきたいとのこと。

続いて「脳みそで作るのではなく、手の赴くままに手先を脳に変えて粘土の造形に挑んでいただきたい。焼き物が始まった4万年前は道具がなく手だけで作っていたものなので、皆さんも手だけで作っていただきたい。どうしても無理な場合は竹べら等道具を使ってもらって結構。だが、道具を使うと作品の中に意思が入りづらくなる。これは私の80年の経験の中で感じ取ったこと。指先を大事に使うと脳も活性化すると言われるが、今日は脳の活性化が出来て作品も作れて、4千年間形が残るという歴史の一頁を刻む良い記念品となるのではないか。この数時間を楽しんでほしい」との制作に対する心構えの説明がありました。

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次は、いよいよ制作に取り掛かります。A4大に折りたたんだ新聞紙の上に粘土の塊を置き、手で次第に形作っていきます。土台となった新聞紙を回すと360度の位置から形を確認できます。途中、神戸先生から「人が迷っている時は口出ししてはいけない。我慢してほしい。指導者は自制して見ていてほしい。これは粘土の世界に限ったことではなく、すべての社会で必要なこと。“ガマンする”ということを粘土を通して覚えていただくとよい。特に親子連れの方は指導するのではなく、お子さんから習うという姿勢があれば口出しはしなくなるもの。そこを勘違いしてついつい大人の物差しで良いとか悪いとか言ってしまうが、結果はうまくいかない。我慢した結果が一番良かったとなるのが良くて、そうしないと作る側の達成感につながらない」との説明がありました。親子連れで参加されている方も多くあり、お父さん・お母さんは口出しするのをじっと我慢して、子どもさんが制作するのを静かに見守っていました。

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作品が出来上がった後、神戸先生から講評がありました。鮫と船上でそれを捕らえようとする漁師を造形した作品を気に入らないからと壊してしまった後、再び同様の作品を作った小学生に対しては「どうなるかと皆心配したが、彼が自分の作品に対して一番自信があったようだ。こうしたいということを最後まで貫いた。これはすごかった。これでいいんです。しかもこの作品には物語がある」とお褒めの言葉をいただきました。

その他、オオサンショウウオ、ワニ、女性の頭、ゴリラ、親子の象、女性の上半身、背中に子を乗せた親子のカエル、お地蔵様などなど素晴らしい造形作品が出来上がりました。次回11月19日には、これらを焼成した作品にご対面です。どのように焼きあがってくるのか楽しみです。

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【第2回】

第1回開催から2か月半後、鈴木先生の窯で焼いていただいた作品が揃いました。当日は参加者全員の作品に対して神戸先生から講評をいただき、「生き生きしている」「生命力がすごく表現されている」「欠点がない。名作だ」「いい仕事をした」とお褒めの言葉をいただきました。

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次に、神戸先生が20代の頃から半世紀、ライフワークとして毎年学生を連れて世界中を旅した中で感じたり学んだりしたことを中心に講演いただきました。どの民族も「人間として生まれてきたものは必ず死ぬ」という共通認識があるものの、世の中がグローバル化されても「我々は我々の価値観で生活して何が悪いのか」という意識を多くの民族が抱いていることに気付いた。そうした中で、古い人間たちがどういった価値観をもって生活をしていたかを知るために、お墓を調査することが間違いないと感じたとのこと。そして中国をはじめネパール、チベット、パキスタンなどの国々のお墓を調査して得られた銅製の槍や矛などの武器、鏡、お金等々の出土品をご持参いただき、参加者は直接手に取って鑑賞するという貴重な体験をすることができました。美術館や博物館では素手で触らせてもらえない。素手で触らなければ当時の人の気持ちは伝わらないからこうして手元に置いているとのこと。当時の人たちは、人が病気になるのは怨霊が人間を試しているという思想があり、その怨霊をはねのけるために鏡が作られたのであり、これが美術の起源であるとの説明がありました。最後に、「子どもには旅をさせてください。世界に目を向けるよう指導してください。日本で正しいことが世界で正しいとは限らない。日本で変わり者と言われる人でも世界から見れば違ったりする。どうか自分を主張できる場を探して世界中に旅立っていただきたい」との発言で講演を終えました。

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◆参加者の声  「素晴らしい会でした」「今後の作品制作に役立つと思いました」「自分の作品をとてもうまく批評していただきました」と、講師の手厚く丁寧な指導により、子どもから大人まで粘土から彫像を作り上げる達成感を感じるとともに、古美術品を素手で触れ鑑賞することのできた大変貴重な体験となりました。

 

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