実施報告

2024.02.29
アートラボぎふ

篆刻実技講座 古(いにしえ)の文字を印に刻む3 実施報告(R5[2023]年度)

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岐阜県書作家協会常任理事の波多野公一氏を講師にお迎えし、篆刻を制作する体験講座を開催しました!

 


【開催概要】

◆日時  令和5年12月17日(日) 10:00~17:00

◆会場  ぎふメディアコスモス(岐阜市)

◆講師  波多野公一氏(岐阜県書作家協会常任理事)

◆参加者数  10名


◆内容  毎回抽選となる人気の高い篆刻を制作する講座を、令和3年度、令和4年度に引き続き、令和5年度は会場を「ぎふメディアコスモス」として開催しました。今回は講師と同門の方2名が来岐され、講座のお手伝いをしていただけました。

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 午前中は篆刻に関しての座学が行われました。冒頭で、各務原市で開催された高校生対象の美術展を例に、多くの方は「書」のコーナーを素通りされること、その理由は「書」はどのようにして見て良いかわからない、上手い・下手・よい点がどういったところなのかが伝わらないからではないかと思われること、本日の「篆刻」は「彫る」ことを行うのであるが、篆刻について「どういった見方」「重視する点」「制作の考え方」について理解を深めていただくこともポイントとしている旨を話されました。

 座学は、「篆刻」の一般解説から始まり、篆刻は書の一ジャンルであること、書道で言う筆と紙に対し、刀と石に替わるということで書と一緒であるとされていること、印面、輪郭、枠、字画の欠損の美しさを競うものであり、「印」とは違う美学があるとされていることをなど説明されました。そして、趙之謙の篆刻と他の篆刻との比較を交え、ただ彫っているだけではなく、筆の勢い・形・スピードなどを表すことができること、漢の時代の「軍司馬印」からは、「欠け」による美の創出などについての説明が、小篆を用いた篆刻と側款についての説明があり、さらに趙之謙の篆刻を紹介しながら様々な篆刻について解説がありました。

 次に、日本にある漢代の篆刻について、当時の印の使い方も含めた説明がされ、呉昌硯(中国の篆刻家)の印により、枠と文字による調和がもたらす印の造形美や文字の特徴などについて、呉昌硯は日本にも影響を与え、その影響を受けた日本の篆刻家として河井荃廬、山田正平の名を出され、その方々の印を表示解説、小林斗盦の印を例に甲骨文字を用いた篆刻印の表示解説、印譜(古い印を押印して綴じたもの)(斉魯古印くん))による古い中国の篆刻印について表示解説、その後日本の奈良平安時代の篆刻印、最後に岐阜の篆刻家「篠田芥津」「阪井呉城」「所洞谷」「中島藍川」各家の篆刻印についてなど、順次篆刻印に関して、表示解説がされました。

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 その後、講義開始前に講師の方が展示された、講師所有の篆刻の実際の印と篆刻を押印したもの(「超之謙」「呉昌硯」「山田正平」「中村蘭台」「西川寧」「梅舒適」「古川悟」などの印影等)と講師制作作品について講師の解説の下、参加者の方々に間近に見ていただき、篆刻の造形への一助としていただきました。

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 実物を見ていただいた後は、彫ることに関連する説明がありました。まず、篆刻三法について(字法(篆書の勉強・字の選択など)、章法(デザイン的なこと(枠と枠との関係も))・刀法(生きた線が出るような運刀など))があること、字法の中の篆書(甲骨文(殷)・金文(殷周)・金文等(春秋・戦国期)・小篆(秦)の様々な字体)についての説明、古璽・古陶・貨幣に彫った例の表示説明、小篆、説文解字(小篆を辞書にしたもの(漢代))の説明、同じ字でも様々な字体となることを数例の文字を用いて、さらに、現代日本の篆書の作品も示して順に説明があった後、篆書を書く練習に入りました。

 講師が解説を交えながら書く様子をスクリーンへ投影し、筆の運び方(穂先を中に入れるなど)について説明がされた後、参加者が「皇帝」の文字を篆書で書く練習を行い、午前は終了しました。

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 昼食休憩の後、午前の練習に用いた「皇帝」の文字の他、篆書の練習に用いていただきたいサンプルなどについて説明があり、その後、篆刻を彫る工程に入ります。篆刻する文字は、練習として、来年(2024年)の干支「龍」の文字、練習に用いた文字による篆刻終了後には、参加者が希望していた文字を彫ります。「龍」の文字は講師が準備したサンプルに準じて、参加者が希望する文字は、構成なども含めて参加者各自創意工夫の上彫っていきます。篆刻の一般的な工程は、①彫る「言葉」を決める。(四文字熟語や論語からなど、独自の世界が創れる等)②字を調べる。(篆書の辞書を使用し、同じ字でも様々な字体があるのでそれをヒントとする・選ぶ等)③印行を作る。④サンドペーパーなどで印面(彫る面)をきれいに整えておく。⑤印面に字を書く。(反転した字を書く必要があるため鏡に写った文字を石に書く等)⑥彫る。⑦できた印を押す。(他、印の側面に内容を書くという側鑑のいう工程もあります。)という説明がされ、講師が実際に彫る場面を前面に映しながら、まず「線」を例に、次に2文字の例により、運刀(引く、押す両方のやり方)や力強い印影を出すやり方、当たる角度、間隔が狭い箇所などのやり方などを実演解説し、印の押し方まで、一連の行程の説明がされました。

 印を押してみた後、思い通りでなかった場合の修正方法(補刀)についても説明がされた後、参加者が篆刻制作に入ります。まずは、練習として龍(辰)を彫ります。朱文と白文どちらにするかを決め、印面に写す作業(又は直接石に書く)を行って彫に入りました。篆刻の行程作業に入ってから、応援にきていただいたの2名の方のご協力もあり、講師も含め、参加者の状況を見ながらきめ細やかに指導がなされ、非常に丁寧かつ充実した講座となりました。

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 参加者の中には、出来た段階で講師に見ていただき、講師からは、より趣きのある篆刻となるよう、解説をしながらその場で補刀をしていただけました。その際には横で見聞する参加者も見え、アートラボぎふならではの講座の一端が垣間見えました。

 最後に、参加者が完成させた篆刻をスクリーンに映し講師の方から講評をいただきました。「思い切って彫るとより力強い線が出ると思います。」「縦横だけでなく、斜めに入っていく線が対称に入っていることが適度な動きが出ていてよいと思います。」など他の方の参考にもなる内容で非常に参考になるものでした。

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 今回は、高等学校在籍の生徒さんが参加するなど、幅広い参加者が受講され、アートに親しんでいただける機会が提供されました。    

◆参加者の声  「先生方がとても丁寧に教えてくださいました。」「県外にはないプログラムで魅了されました。」「とても楽しかったです。」と、講師の丁寧な指導により、初心者でも楽しく篆刻作りを体験した満足度の高い講座となりました。

 

 

  

 

 

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