実施報告

2024.03.15
アートラボぎふ

パフォーマンス/MAMMOTH×藤村港平×川瀬浩介 ワークショップ/ちいさな生きものブローチ作り 実施報告

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 NHK Eテレ「にほんごであそぼ」のセット衣装を担当するなど、コスチュームアーティストとして広告、演劇、ダンス、バレエ、映画、テレビなどその発表の場は多岐にわたる ひびのこづえさんを講師に迎え、「ちいさな生きものブローチ作り」ワークショップと衣装:ひびのこづえ氏&舞踏家:藤村港平氏&作曲家・美術家:川瀬浩介氏によるパフォーマンス公演「MAMMOTH」を開催しました!


【開催概要】

◆日時  【ワークショップ】令和5年12月23日(土) 13:30~16:00

              令和5年12月24日(日) 10:00~12:30

     【パフォーマンス】令和5年12月23日(土) 17:00~18:15

              令和5年12月24日(日) 14:00~15:15

◆会場  清流みずほ認定こども園リーベリーホール(瑞穂市)

◆講師  ひびのこづえ氏(コスチュームアーティスト)

◆参加者数  ワークショップ:94名(23日46名、24日48名)

       パフォーマンス:167名(23日75名(うち未就学児14名)、24日92名(うち未就学児11名))


◆内容  

【ワークショップ「ちいさな生きものブローチ作り」】

 講師が舞台やテレビの仕事で衣装を作ったときに残ったきれいな生地や衣装の断片を使って、きれいな色の糸でチクチク縫いながら、ちいさな生きものブローチを作ります。講師が衣装を制作するときには必ず自然の中のモノをヒントにするという。人間の創造力だけでは限界があり、自然の中のモノはそれを補ってくれるとのこと。普段見慣れている自然を感じてほしい、象のように大きな動物でもブローチにすれば「ちいさな生きもの」になる、人間だって広い世界から見たら「ちいさな生きもの」であるとの講師の想いから続けられている講座。本年度の会場は、瑞穂市の自然豊かな田園地帯の中にある「清流みずほ認定こども園」で開催しました。

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 冒頭、講師から制作手順の説明がありました。舞台やテレビの仕事で衣装を作ったときに残った生地や衣装の断片を一つひとつ棒状に巻いて片方を輪ゴムで留めて大切に保管しておき1片の生地も無駄にしないこと、危険防止のため針は1本だけ使うこと、そして紛失しないよう針の管理は自分自身でしっかり行うこと、作業机の上はきれいに整理整頓しないと良い作品が作れないことなどの話があり、講師の衣装づくりの取り組み姿勢・想いを垣間見ることができました。

 ブローチは胸に付けるものではあるが、なるべく大きなものを作ってもらいたいことと、下絵には必ず色を全部塗ることが大事で、作りながら考えることは失敗のもと、最初に決めることが大事であること、自分で書いたものを最後まで作ることがこのワークショップの目的のひとつであることの説明がありました。

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 絵を描いた後は、生地を取りにいってブローチ作りに入ります。取ってきた生地はベッドを作る部材に縫い付けます。その部材は曲げたり立体にしたりすることができるので、使い方によって趣きのあるブローチができます。生地を縫い付ける針は、各自1本と決め、糸は全部使い切ること、縫えば縫うほど面白みがでること、針の取扱いなど全般的な説明がされました。

 親子で参加している方に向けて、親御さんはお子様が難しいところのお手伝い以外は手を出さない、自分でできるところは自分でするなどにも言及がありました。

 全般的な説明がされた後、絵を書くことからスタートしました。絵が思い浮かばない場合は、スマホを頼る・散歩する・「〇(まる)」や「□(しかく)」を書いていると頭が働くのでそういった図形を書くなどもいいと講師からのアドバイスもありました。絵が描き終わった方から生地を選び、針を用いて縫い付けていきました。

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  講師から、完成したブローチは今日だけ付けて終わりにしないで、使い続けてほしいと、例えばシンプルなトートバッグに付ける、カーテンに付ける、ドアノブに付けるなどして使い、壊れたらまた端切れやボタンなどを使い針でチクチク縫って直すことでどんどん愛着がでてきますと、また、限られた時間内で完成できなかった場合、布は持ち帰っていいので、必ず完成させてくださいとのコメントがありました。

 ブローチが完成した参加者はブローチを胸に付けて前に出て講師から講評を受けました。うさぎ、鳥、コンドル、花、孔雀、キリンなどなど、個性あふれる作品に講師からは「ファーを切るのは大変だけどしっかり丁寧に切って素晴らしいものに仕上がっています。ファーの中に目が入っているのがチャーミングでステキです」「黄色の布にピンクのステッチが効いて、生き生きとみえます」「単色ではなく、青という色でもいろいろな生地や色を使っているところや、くちばしもしっかり作ってあり、足にゴールドの布を使っていてステキな青い鳥ができています」などお褒めの言葉をいただきました。

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【パフォーマンス/MAMMOTH×藤村港平×川瀬浩介】

 パフォーマンスは清流みずほ認定こども園内のリーベリーホールで行われました。リーベリーホールは木材は県内産の木材を使用し、舞台でない部分は土のままという極力自然に近い状況を創出しているホールです。園の先生のご協力により、土ぼこりを抑えるため、天然の柿渋を混ぜ、土に近い色にした漆喰を舞台となる部分に塗って行われました。演じるのは、1995年生まれ、2022年に、構造主義的な思想を援用し、ダンスの前提する積極的意思や主体性を転覆することを試みた作品“対象a”が【京都賞】と【ベストダンサー賞】(池ヶ谷奏)を受賞した「藤村港平」さん。2015年、2018年、2021年にはそれぞれ、森山開次作品《サーカス》《NINJA》《新版・NINJA》(新国立劇場委嘱作品)のための音楽を担当した「川瀬浩介」さんの音楽に合わせてパフォーマンスが演じられました。

 ステージに向かって左側にスロープがあり、藤村港平さんがマンモスの衣装を纏ってスロープから登場しパフォーマンスが始まりました。最初は軽やかな曲の中、観客の間を通って(小さなお子様は少しおっかながる様子も)から柿渋の漆喰を塗った舞台場所へと移動し、力強いマンモスを表現、その後、マンモスの皮を脱ぎ、骨だけになったマンモスを表した(※)衣装となってからは、絶滅したマンモスの悲愴さ(※)を演じ、さらにその衣装を脱ぎ、首から上に灰色に白い〇が入ったマスク(猿(※))を被り、観客と見つめ合う・観客関に入る・観客の膝に座る・観客の間に座るなどもする場面も見られ、その後は、ズボン・靴・上着(※)を纏って、その後マスク・ズボン・靴・上着をとり、黒いスーツを着用、マンモスの牙を繋いだ長い円筒状のものを用い、その様子がまるで絶滅したマンモスを慈しむかのようにも見え、終盤には白いレースのような布を被り、指先まで震わせる(まるでまゆから脱皮するかのような(※))細やかな演技の後、最後にはしなやかでもあり力強くもあるパフォーマンスを演じ、マンモスが絶滅しても希望をもつ(ある)(※)ことを、柔軟・柔靭さをも交え演じました。((※)は本記録制作者の主観です。)

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 パフォーマンス終了後、引き続いて、ひびのこづえさん、藤村港平さん、清流みずほ認定こども園園長の加納精一さん、そして「アートラボぎふ」ダイレクターの古田菜穂子さんによるトークショーが行われました。

 ファシリテーターを務める古田さんからこの場所(園の「リーベリーホール」)で実施した感想を聞かれたひびのさんからは「最初見に来た時に非常にいい場所と思ってここで実施することを決めました。」と、園長の加納精一さんは「このホールはほとんどを自然素材としており、雨の日でも外で遊んでいるのと同じ状態にするため地面は土としています。舞台となる部分には漆喰に柿渋を入れたものを塗りましたが想像以上に土埃がでてしまい誠に遺憾。」である旨を話され、また、「半面、土埃がスモークのように見えたりして、また趣きがあったのでは」と場を和ませるような発言もありました。藤村港平さんからは「素足で地面に立つことはレア。そのような場所に身体があることは大事と思いました。」などの感想が述べられました。

 また、古田さんから、こづえさんの衣装について感想を聞かれた藤村さんは「こづえさんの衣装はすごいものになっている。自分にとっては衣装をきて身体がどう反応するかが大事。体があることがあたりまえと思っているが、普段、身体を自覚することはあまりないことを気付かせてくれるもの。」との発言がありました。

 その後は参加者の方からの質問を受け付け回答する時間となりました。参加者の方から、「赤い衣装のレースの図案は血管を意識したのですが、そうなのでしょうか。」との質問にひびのこづえさんは「まさしくそのとおり。描いた絵がそのままニットとなる機械があり、それで制作したものです。」と回答。藤村港平さんから「職業柄いろいろな全身タイツを着ることがあるのですが、こづえさんの全身タイツは体にフィットし、身体を美しく見せるうえに、非常に動きやすい優れものです。」と感想が述べられました。こづえさんは「人間の身体の美しさをみていただきたいことが背景にあり、ダンサーの方々がきれいなスカートなどを着用すると体が隠れてしまうので、身体の美しさをそのまま見ていただきたいと思って衣装制作しています。」と衣装づくりの一端を述べられました。藤村港平さんから、「普段、身体の動きは無意識の世界に埋没しているが、踊るときは例えば耳の後ろや尾てい骨の後ろとかあまり意識しないところを意識して踊っています。埋没した身体を一人称化する言ってもいいかと」ともお話がありました。他に「即興化されるのはストーリー全体なのですか、部分的なのですか」「藤村港平さんのパフォーマンスは呼吸がすごく印象的。場面の切替のためなのか、自分を整えるためなのかなど、何か意味合いがあるのですか。」など、他にも参加者から質問があり、藤村港平さんから丁寧な回答がされ、また最後には4名の方の当プログラムへの想いが語られる「アートラボぎふ」体験プログラムならではの機会が設けられました。

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◆参加者の声  「たくさんの生地の中から選ぶことができ、できあがるまでワクワクしていました。楽しかったです。」「思いっきり集中でき、無心になれました。」「言葉のない時代からの身体コミュニケーションが子どもに通じるかと思っていたが、子ども達をみていたら十分感じたと思いました。」「とってもかっこよく、美しかった。トークがおもしろかった。」「とても素敵な場所で楽しかった。」「身体の美しさ、音と衣装とダンスのすごさにくぎ付けでした。」と、前回と同じく子どもから大人まで参加者の皆様に楽しんでいただけ、大変満足度の高い講座となりました。

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