実施報告

2024.03.19
アートラボぎふ

ストップ・モーション・アニメ・ワークショップ-スマホで創る実験映像- 実施報告(R5[2023]年度)

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映像作家の伊藤高志氏を講師に迎え、スマートフォンだけでストップ・モーション・アニメーションを制作するワークショップを開催しました!


【開催概要】

◆日時  令和6年1月20日(土) 10:30~17:00

◆会場  情報科学芸術大学院大学[IAMAS](大垣市)

◆講師  伊藤高志氏(映像作家)

◆参加者数  10名


◆内容  会場はソフトピアジャパン・センタービルに入るIAMASの教室をお借りして開催しました。

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 講師は国内外の映画祭で絶賛された写真のコマ撮りによる10分の短編作品「SPACY」でデビューされた方です。超現実的な視覚世界や人間に潜在する狂気や不条理を追求、劇映画や、演劇、ダンスといった他ジャンルの作家たちとのコラボレーションも多数手がけています。ワークショップは、スマートフォンのみを使用(撮影し、アニメーション映像とするまでの編集もスマートフォンで行う)して行うもので、通常の撮影映像やアニメーションとは異なる独創的な動画作成を行うものです。

 最初にストップ・モーション・アニメとはどのようなものかが、IAMASの映像室をお借りして、講師の作品及び他の方の作品が上映され、それぞれの作品について講師より解説がされました。上映された作品は最長のもので7分、多くのものは2分~3分でしたが、講師の解説により、今日制作を行う際に非常に有用となりました。

 制作ポイントとして、「体力と気力が必要」、「日常的な観察に則って撮影されている」、「音についても同様である」、「一部分のみが固定され周りの風景が変わるものを作成するため似た画像を探し出す大変な労力を費やしているものもある」、「最初は真似から始まる。無断でアップロードするなどは著作権侵害ですが、閉じた空間で真似を行う場合は好きなことをしてもいい。」、「現実の風景とアニメーションの虚構の世界の境界があいまいになっているところの面白さ(紙に描いたものだけを想像した場合を想定した場合との比較)」、「現実をくまなく調べる、しっかり見ることが大事。アニメータと言われる方々は常にこの動きはどのように表現するのかを考えながら見ている」ことなどを述べられました。

 その後会場に移動し、本日使用するアプリケーションの操作方法の説明がされました。自分の手をグーからパーへ開いていくことの撮影を具体例に、「前の画像を残しつつ次の画像を撮影する方法」、「撮影する位置決めの時に有効な方法と、上映する速さと撮影コマ数との関係」、「一時的に止まったように見せる方法」、「不要な撮影コマの削除方法」などや、さらに、講師自ら動作を行いながら、コマ数と上映したときに見える動きの速さについての説明がされました。さらに、今回のワークショップで取組む参考として、講師が制作した映像(映像室で上映されたものとは異なるワークショップ向けの映像)を数例上映し、それぞれの制作ポイントの説明がされました。

 それらの説明の後、「TVなどで放映されるアニメーションはあらかじめ描いた絵を撮っていくので完成がわかっているが、1コマ1コマ撮影し創っていていくものは再生してみないとわからりません。再生してみたら自分自身が驚くことがあります。その時に面白いと思えると次の作品を創ろうと思える。自分自身が驚くようなものに出会うためには多くの作品を創ってみることでそのようなチャンスに巡り合えます。」「今日は実験的な映像として、常識に捕らわれない考え方と方法論で創ってください。」と1コマ1コマを撮影して出来上がるストップ・モーション・アニメの醍醐味などについてお話があり、アニメーションの語源がアニマ(ラテン語)であること、すべての物に魂があるという考え方の表現方法(命のないものに命を吹き込む)をアニメーションということなどの解説があり、「どんなこと、どんなもの、どんな方法でもいいので、どんどん撮ってください。」「どのようにしたらいいかなど、その都度相談してください。」と、さらに、天候の都合により建物内で面白そうな撮影場面・構図などについてもお話しをされ、午前の部を終了しました。

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 昼食休憩後は、参加者が各自会場となっているソフトピアジャパン内を中心に撮影を行いました。撮影している場で構図やコマ撮り数などの助言や、撮影した画像をスマートフォン上で上映してみて、助言がありました。

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 参加者全員の撮影が終わり、創られた作品を全て講師がとりまとめて、午前と同じ映像室へ移動し上映、制作者の制作背景や意図、創った作品についての感想などを聞きました。

 当日約3時間ほどの時間で、「〇(マル)を中心に据えて背景を変えた作品」、「怪物が部屋の中を移動している様子の作品」、「講師の例(サンポ)を参考とした建物内を移動した作品」、「半月にポーチを置いて動いているようにしている作品と付箋紙が動いている・小さくなったり大きくなったりしている作品」、「ちいさな白いロボットが衣装をつけ、瞬間移動している様子の作品」「影を使ったボールペンが動いている様子の作品」「震災地(能登)への想いをミナモを使って伝えられたらいいと思って作った作品」「階段部分で紙を使った作品」「ガラスに映った照明や床の四角を使った作品」「紙・文字などを書いた紙を使った作品」他の作品が創られました。

 制作者(参加者)からは、「自分が知っているものでも違って見えて面白かった。」「机の向きや怪物の向きを一緒にしなければならないところが難しかった。」「同じような画像を繋げることが上手くできず難しかった。」「建物内の四角いものが動いていたら面白いと思って創りました。頭の中の構想とはなかなか一致しないものだと思いました。」「電気をずっと点けるのにどういったやり方があるのかが知りたかったので作品にしてみました。」「偶然影が映ったので影を使ったものを作ってみたいと思って作品を創りました。影が変な風にならないようにするのが難しかった。」「細かくしすぎて頭が重いような様子になっているところがもっと上手くできたらと思いました。あと、眩暈の症状がある人にも優しいものをと思って創りました。」「階段の手摺をジェットコースターのように表したいと思っていましたが、思ったより短かったためドラマ性を持たせるように創りました。場面が変わるところの見せ方が難しかった。」「あまり考えずに創ったのですが、意図せず以外に面白い作品になったと思います。」「紙に囚われてしまって、場・空間を上手く使えていなかったと思います。次はもっと大きなもので創りたいと思いました。」と感想などが述べられました。

 講師からは制作者(参加者)の感想などの後、「スピード感があってよかったと思います。」「暴力的ではあるけどかっこいいです。絵の動きと手の動きを一緒にしないと動いている様子を表すのが難しいものですが、上手くできていると思います。」「いろんな空間へ行っていることがうまく出ていると思います。建物の四角と偶然持っていた付箋紙の活用が偶然の閃きとしてすぐに作品とされ非常にいいと思います。動きをスムーズに見せるためには上映スピードを速くすることもありです。」「空間移動したことを表現するのに、床の色が変わっていることより別の場面、例えば床の材質が変わっているとかの方がよりよかったのではとも思いました。」「着眼点がよかったです。もっと発展させてもいいと思います。初めてなのによくできています。」「頭が重いようにみえるところには何かセリフを入れると面白くなると思いました。撮影の意図と異なることになることもありますが、出来たものを見て、新たな作品へ向かうこともあります。」「紙の感覚と生きているという感覚が上手く表現されています。」「どんな実体なんだろうと思わせる作品になっています。物ではなくて光を捉えているように見えています。面白いと思います。」「もう少し空間を取り込むとよりよかったと思います。文字だけで表す表現もありますから、方向性としてはよかったと思います。」等、作品毎に講評がありました。

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 「最近若い方たちがアナログの方法を面白がるムードがあります。アナログで創られた作品が古いものではなく、むしろ新しいという状況です。実写、アニメーションは連続しているものですが、コマ撮りは連続性を非連続性にでき、一旦バラバラにして再構成できる面白さがあります。再構成する時に他の作品をみて、自分なりに取り入れ、自分なりの映像を創っていくことが割と簡単にできるものです。どんどん挑戦してください。」と話されワークショップを終了しました。

◆参加者の声◆「もっと長い時間をかけてやりたかったです。」「普段あまり思いつかない方法で撮影出来てすごく楽しかったです。」「いつか撮りたいと思っていたので、具体的な体験ができてよかったです。」「わからない点も丁寧に教えていただきました。」「コマ撮りアニメーションをみんなで作って良い作品を見て、奮発する機会となりました。」など、スマートフォンだけで独創的なアニメーションが創れる体験ができた貴重な講座となりました。

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